Teacher's Discussion17 Wayo Kudan Girls Junior & Senior High School中2学年主任中原 静香先生PBL型授業やSTEAM教育など、革新的な教育をハイブリッドで展開する和洋九段。その一方で、定評のあるきめ細かな基礎学力養成にもこだわり続けています。生徒一人ひとりと、日々温もりを感じることのできる距離で接している中高の先生方が、PBL型授業重視と基礎学力養成重視の立場に分かれて、熱い議論を交わしました。PBL型授業を重視したい高2学年主任佐藤 紀子先生PBL型授業を重視したいを重視したいPBLを通して学んだ経験は生きる糧としてもつながっていく中原先生 そもそもPBLは「問題解決型学習」「課題解決型学習」などと訳される学習法ですが、例えば、「体育祭で行う『扇の舞』を成功させるにはどうしたらいい?」というテーマをもとに、担当委員たちの間でPBLを応用する機会があります。本校ではすでに定着している学び方といっても過言ではないでしょう。木津先生 私は5年連続で高2〜3の授業を持っているので、大学受験を視野に入れた授業をしなくてはいけないという気持ちが強いです。どうしても授業の中で過去問や演習問題を扱わなくてはなりませんので、PBLの重要性よりも、「いやいや、まずは基礎学力重視でしょう」と言わざるを得ないのです。佐藤先生 私もここ6年ほど、高校の授業を担当しているので木津先生のおっしゃることがよくわかります。ただ興味深いのは、今の高2と接していると、PBLの経験からグループになって意見交換することに慣れていますし、発表がしっかりしていますよ。中村先生 そうは言っても、昔ながらの“読み・書き・そろばん”とまでは言いませんが、やはり「じっくりと基礎学力を固めてからのPBL」と、そんなふうに思うことがありますね。中原先生 PBLは、「人前で話す」とか「調べた結果を発表する」とか、そのトリガーに対して自分の答えを見つけるということなのですが、将来的に大学受験や、さらにその先の社会人に…となった時に、PBLを通して学んだ経験は生きる糧としてもつながっていくものと考えています。つまりそういった場に慣れておくことも重要なのです。中村先生 中原先生がおっしゃるように、PBLを通して身につけた力は確かに社会に出てからも活きるものでしょう。ただ生徒によってはPBLに対しての苦手意識もあります。生徒それぞれの個性を活かしながら、そこはきめ細かくケアしてあげたいところですね。中原先生 もちろん全員が得意なわけではありませんが、逆に上手な生徒の真似をしていくところから、自分の埋もれていた才能に気づくこともあります。単に人前で話をすることだけではなく、自分が結論を出したことについて、自信をもって発表できるということが、6年間を通して磨かれていくところにもPBLの魅力があると考えています。どんなに話し上手でも基礎学力がないと合格が難しい現実も木津先生 例えば、本校では総合型入試で大学進学を目指す生徒が増えていますが、プレゼンを課す大学、グループディスカッションを課す大学があるのと同様に、それでも学科試験を重視する大学が数多くあるのも事実です。中村先生 確かにそれは言えますね。PBLが最強の武器というわけではありません。木津先生 生徒たちからすれば、「総合型ならもしかしたら受かるかも」と期待したくなるのもわかりますが、どんなに話し上手でも、やはり基礎学力がないと合格は難しいというのは、残念ながら今年も経験しました。その辺りはどうですか?佐藤先生 はい、そこは同意します。ただプレゼンに一生懸命に取り組むことで、教科学習の成績に不確実な時代だからこそ、正解のないものを見つけ問題解決をする力が必要です。PBL型授業ほんとうに必要な教育って何だろう?
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